2014年 09月 06日
「沖縄で撮影されたもので、確実にオオジシギと判断できる画像を見たことがない」という疑問にこのブログで初めて触れたのが2010年9月12日。それから早4年が経つが、ここに来てようやく、沖縄で撮影された有力なオオジシギ候補と思える画像が出てきた。といっても私はこの半年ほど他のことで忙しく、このテーマに関わりだすと大きく時間をとられかねないため、あえてそうしたサイトを一切見ないことにしていたので、実際には4か月ほど前から画像が公開されていたようだ。というわけで、色々思うところあってこれまで散々書いてきたこのテーマを、ここにきて放ったらかしではさすがに無責任と思うので、以下に私なりの感想を書いておきたい。対象にしたのはこちらのページ最下部の6枚の画像。 今回の個体がこれまで沖縄でしばしばオオジシギとされてきた例と大きく異なるのは、頭の割に胴(胸~尾端)が長大で、また顔の面積/長さの割には目が小さい、というオオジシギらしいプロポーションがよく現れていること。これはつまり目のサイズを基準に嘴から尾端までの全体像を見た時に、全てが長く間延びしたような印象を受けるということ。これと顔の暗色模様が細く弱いことと重なって、目の周辺スペースが広く空いているような印象を強く受けるのもオオジ的なところ。翼端からの尾羽の突出はオオジシギとしては短めに感じるが、本州や北海道のオオジシギでも個体や姿勢により同程度に見えるケースはあるので、その範囲内のように思う。 <<参考: 2006年4月6日に神奈川県で撮影のオオジシギ 顔つきやプロポーションなど、全体的なjizzが今回の沖縄の個体とよく似ている。 開いた尾羽の印象は、確かにオオジシギ成鳥のものに最も近く見え、枚数もチュウジシギにしては少ないように見える。ただし、撮影角度が前からでそれなりに距離もあり、条件はそれほど良好ではない。このため、例えば最外側で数枚が重なっているとか、T5周辺に脱落があるといった場合に、チュウジシギの尾羽がこのように写る可能性が全くないか?については、私は画像から100%の確信を持つことはできなかった。 次に、今回のような沖縄における春季のオオジシギvsチュウジシギの識別で特に注意が必要と思う点をいくつか挙げてみる。
以上の点を踏まえると、やはり元々オオジシギが普通に渡来していることがはっきりしている本州や北海道での識別に比べ、今のところかなり慎重な判断が必要といえるし、今回についても欲を言えばもう少し良好な条件で尾羽の特徴を確認できれば―という印象は受ける。しかし一方で、私のこれまでの経験の範囲では、チュウジシギのプロポーションがオオジシギに近似する傾向は本州で顕著であり、色彩が近似する傾向は逆に沖縄で顕著であるといったことも考えると、一羽のチュウジシギにこれほどオオジシギ的な特徴が偶然揃う可能性よりも、単純に沖縄にオオジシギが渡来する可能性を考える方が無理がないようにも思える。 こうした野外での観察・撮影については、必ずしも常に全ての特徴が100%理想的な条件で捉えられるわけではないため、それがどこまで達成された時点でいわゆる“断定”してよいか?という点は、なかなか一概には言えない難しいテーマだが、しかし現時点では私は今回の沖縄個体をオオジシギと考えることに少なくとも十分な妥当性はあるように感じている。またもちろん、今後同様の個体のより良好な条件の画像が撮影される可能性もあるので、そうした観察例のさらなる蓄積にも期待したいと思う。 <<参考: 2008. 9. 15 神奈川県 顔つきがオオジシギに似る大柄なチュウジシギの例。しかし三列風切や雨覆の横斑は非常に太く、尾羽のパターン・形状・枚数(20枚)はチュウジシギの特徴が表れていた。
by Ujimichi
| 2014-09-06 17:46
| 沖縄のオオジシギ?
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