2014年 10月 19日
キョクアジサシ観察記
まだ台風の吹き返しの強風が吹き荒れる10月14日の三番瀬。私にとっては実に22年ぶりにキョクアジサシを自力発見する幸運に恵まれた。この後日には全く観察されていないようなので、台風の影響による1日限りの滞在だったようだ。

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キョクアジサシ 第1回夏羽→第2回冬羽, 1st summer-2nd winter Arctic Tern Sterna paradisaea Oct. 14th 2014 Chiba pref. Japan


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この日の朝の干潟はほぼ満潮状態。杭の上で休んでいるシギチを観察していると、徐々に強い西風が吹き始めた。午前10時を回り、時折横殴りに砂嵐が全身を襲い、一度は大きな発泡スチロールの箱が体当たりしてくる始末。これは参ったなあと思っていると、東の方からパラパラと7羽ほどのクロハラアジサシが飛来し頭上を通過。へぇなるほどこれも台風効果だなと、何枚かシャッターを切りながら見送る。

それからさらに10分ほどすると、また何やらアジサシ類が1羽高く飛んできた。あれ?クロハラにしては随分翼が尖ってるけど何だ?と反射的に500㎜を向けて連写。モニターで画像を確認すると、明らかに見覚えのある丸い頭とパンダのような顔が映し出された。風切の透け方からしてもこれは…キョクアジサシ!!しかしそう思った時には既に西の方へ飛び去った後だった。残念ながらこれは上空通過で終わりかなあと、とりあえず諦めてシギチ観察に戻る。

ところが10分もすると、またクロハラアジサシが何羽も飛んでいる。しかも今度は東側の突堤付近の海面で採餌しているようだ。もしかしたらその中に先ほどのキョクアジサシが混じる可能性もあるかもしれない。そこでそそくさと荷物をまとめて突堤に移動し、しばしクロハラアジサシを撮影することに。よく見るとアジサシも何羽か混じっているが、いずれも風が強くてレンズを振られてしまうのでなかなか撮影は難しい。

a0044783_00000597.jpgその場で30分ほど経過したがあまり変わり映えがしないので、ふと振り返って干潟を双眼鏡で眺めると、ハマシギの群れに紛れて何やらアジサシ類が1羽背を向けて立っているのに気付く。しかも遠目にもなんとなく地面にへばりついているような立ち方(=つまり足が極端に短い!)に何かゾクッとするものを感じてスコープで確認すると、案の定これが先ほど通過したキョクアジサシだった。初列風切の換羽・摩耗状態からも同じ個体で間違いないだろう。久々に大いに取り乱しながら、あたふたとデジスコをセットするが、何しろ風が強いので風上ばかり向いていて、なかなか横を向いてくれない。しかしモニターの中で時折振り向きざまに見せる例のパンダ顔に、おおこれこそ昔多摩川で見つけたあの顔だ!キョクだキョクだ!!と改めてじわじわと胸の高鳴りが押し寄せる。

ある程度撮影したところで、今度は少しづつ様子を見ながら身を屈めて慎重に横へ回り込んでみることに。地形的に距離が保ちにくい位置で、飛ばしたら元も子もないのでヒヤヒヤものだが、なんとか飛ばずにいてくれたので撮影を再開。逆光だが真横だし距離はかなり近い。しかしそこであろうことか、右手からビーチサンダルを履いた貝堀のおじさんが歩いてくる。これは万事休すか―と思ったが、キョクアジサシはおじさんの足元から数メートル飛んだだけですぐ降りてしまった。何だ逃げないのか・・・とズッコケたが、ということは順光側から撮れるかもしれない!と500m片手に順光側に回ってみることに。それから約20分、数回の伸びも含めて至近距離で心ゆくまで眺めることができた。

初めて私がキョクアジサシを見つけたのは、写真のあるものとしては日本初となる1988年8月の多摩川河口。2度目は1992年8月の三番瀬。写真図鑑にもよく載っている個体だ。今回はそれから実に22年ぶりの自力発見となった。この間アジサシ類の見やすい時期と場所にさほど多く出かけていなかったので随分間が空いてしまったが、それにしても10月半ばという遅い時期に再びこの幸運が訪れるとはちょっと予想外。また、アジサシが千羽いてもいない時はいないのに、今回はクロハラアジサシ7羽と、アジサシわずか4羽とともに現れた。このいつ何が起こるかわからない鳥見の奥深さの一端に久しぶりに触れることができ、ここ最近としてはいつになく軽い足取りで帰路についた。

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キョクアジサシ 第1回夏羽→第2回冬羽, 1st summer-2nd winter Arctic Tern Sterna paradisaea Oct. 14th 2014 Chiba pref. Japan
丸い頭と目の下まで回り込んだ黒色部、極端に短い足がトレードマーク。可愛らしさと格好よさを絶妙に兼ね備えた、とても魅力的な鳥だと改めて感じた。

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キョクアジサシ 第1回夏羽→第2回冬羽, 1st summer-2nd winter Arctic Tern Sterna paradisaea Oct. 14th 2014 Chiba pref. Japan
初列風切はP1-5が新羽、P6-10が旧羽。ヨーロッパの図鑑を見ると、キョクアジサシの第1回夏羽の初列風切は春までに既に全て幼羽から換羽済みで、このような新旧の混在がなく一様に見えるとされている。過去の国内での観察例でいうと、父が1989年7月に波崎で撮影したものでは確かにその状態が保持されていたが、1988年8月多摩川と1992年8月三番瀬の2例では共に内側初列風切P1付近から再び次の換羽が始まっていた。今回はそれからさらに2か月後の10月中旬の観察(時期的には第2回冬羽への移行期)ということを考えると、ちょうど辻褄が合う換羽状態ではないかと思う。日本国内のキョクアジサシの観察例は主に7-9月頃に集中しているので、この時期の換羽状態を捉えた画像は貴重と思う。 参考文献:Harris, A., Tucker, L. & Vinicombe, K. 1989. The Macmillan Field Guide to Bird Identification. Macmillan, London.

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キョクアジサシ 第1回夏羽→第2回冬羽, 1st summer-2nd winter Arctic Tern Sterna paradisaea Oct. 14th 2014 Chiba pref. Japan
飛翔時に下から見ると風切が白っぽく透けて見え、アジサシのような次列風切の暗灰色の帯が見られない。

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キョクアジサシ 第1回夏羽→第2回冬羽 (右端), 1st summer-2nd winter Arctic Tern Sterna paradisaea, with two Common Terns Sterna hirundo, Oct. 14th 2014 Chiba pref. Japan
左2羽のアジサシとの足の長さの差に注意。

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キョクアジサシ 第1回夏羽→第2回冬羽, 1st summer-2nd winter Arctic Tern Sterna paradisaea Oct. 14th 2014 Chiba pref. Japan

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by Ujimichi | 2014-10-19 17:33


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