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2015年 04月 08日
アイスランドカモメと不明カモメ
まずは今年の都内のアイスランドカモメ亜種kumlieniの画像を一点。ところでよく考えるとこの個体、今のところ日本国内では最も南で観察されたアイスランドカモメということになるはずだ。

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アイスランドカモメ 亜種kumlieni Larus glaucoides kumlieni

一方で、2009年に山階鳥類学雑誌に論文発表され、日本産鳥類目録第7版にも出典として採用されてしまっている2007年長崎県雲仙市の記録は、多くのカモメ観察者が一目でわかるほどの明らかな誤認例。ネット上の同個体の画像を見てもまず背の色が濃すぎるし、足は黄色いし、初列風切のパターンもいかにも不自然。タイミルセグロカモメまたはセグロカモメの初列風切を単に白くしたような奇妙な外観のこうしたカモメは、かなり稀ながら日本各地でこれまで度々観察されている。アイスランドカモメとは言い切れない―のではなく、アイスランドカモメではないと明確に言い切れるタイプだ。件の論文は確かにカモメをよく知らない人が見れば専門用語や細かい数字を並べた一見いかにももっともらしい体裁なので、一般に権威あると思われている研究誌や目録にもあっさり載ってしまったのだろうが、せめて影響力の強い機関の中にはもう少しカモメ類を適切に見極められる人が増えることを願うばかりだ。

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長崎のものと同タイプの不明カモメ  2002年3月23日 神奈川県
13年も前の画像だが、この個体は発見した時点でアイスランドカモメという選択肢自体思いつかない全くの別物という印象。背の色はセグロカモメと同等。小さめの個体ではあるが、特にタイミルセグロカモメの小さめの個体では普通に見かける範囲のサイズと体型と感じた。畳んだ初列風切は各羽先端の白色部が非常に大きくてほぼ切れ目なく繋がっているが、と同時に内弁側の縁(この画像では上辺部)が不自然に黒ずんでいるのもこのタイプによく見られる特徴で、アイスランドカモメには普通見られない配色。長崎個体も特にネット上の画像で同様の特徴がはっきり現れている(これに対して本エントリ冒頭のアイスランドカモメではこの内弁側の縁が逆に白っぽいぼかしになっていることに注意)。既知の種の中で消去法的に識別すると、人によってはこのような不明個体をアイスランドカモメと見てしまうのも無理はないが、こうしたタイプの存在を予め知っていればそれほど迷うことはないだろう。

by Ujimichi | 2015-04-08 17:31 | アイスランドカモメ


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