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2015年 08月 14日
アライソシギ×オバシギ
去年から今年にかけて色々と忙しく、あまりに時間が経ちすぎているので今更という感もあるが、オバシギ×アライソシギについて少し画像と共に書き留めておきたい。

昨年の10月7日のこと、何気なく眺めていたツイッタ―に突如登場したこのシギの画像を一目見た時はさすがに腰を抜かした。日本のシギチの中で何に一番近いか?といえばオバシギではあるのだが、とはいえオバシギの範疇を大きく逸脱し、明らかに何か別の匂いが強く漂っている。そして数分と経たないうちに、以前ネットで見た、アメリカで夏羽が2度観察されている雑種―アライソシギ×オバシギの姿が脳裏に浮かぶ。そうだ!まさにあれをそのまんま幼鳥にしたような鳥ではないか!!というわけですぐさま撮影者のSさんにDMを送る、するとSさんもやはり同じことを考えていたところだという。さらに後日興味のありそうな友人知人の何人かとやりとりがあったが、やはり皆さん同意見。まあある程度熱心なシギチ観察者なら誰が見てもそうなるよなぁ、となんだか改めて深く納得してしまった。

その後はいうまでもなく私も何度もこの個体を観察しに現地を訪れたが、尾羽、腰、翼の上下面なども含め、最初の画像では見えていなかった細部を見れば見るほど、両種の中間の特徴を見事に兼ね備えていることがさらによくわかった。一応念のために他の組み合わせの雑種の可能性も色々想像してはみたが、やはりこれといって上手く当てはまるものはない。さらに10月のかなり幼羽に近い状態から、第1回冬羽、第1回夏羽と長期に渡る羽色の変化からも、当初の判断を支持する要素しか出てきていない。つまり野外識別の観点からは、非の打ちどころのないアライソシギ×オバシギ、というのが私の率直な印象だ。

なおこうした個体については、DNA分析云々という声もよく聞こえてくる。もちろんそちら側からも裏付けが取れればそれはそれで興味深いと思うが、ただ実際にそうした作業に直接関わることができる可能性があるのはほんの一握りの人にすぎない。これに対して野外観察や、今の時代ならではのネットによる画像収集・比較検証といった作業は、その気になれば誰でもすぐに行え、直接的にその過程に参加できるのが大きな利点であり醍醐味だ。この個体の画像はこれまでにネット上にもかなり多数出回っているので、「~と言われている」という伝聞に終わらず、両親の特徴がどこにどう表れていると考えられるのか、ぜひこの機会に全体の印象から細部に至るまで、一人一人の目で詳しく観察し考えてみて頂けたらと思う。

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アライソシギ×オバシギ 第1回冬羽 2014.11.10 千葉県船橋市 1st winter Surfbird x Great Knot Calidris virgata x C.tenuirostris
オバシギより嘴が短く全体にやや寸詰まりの体型で、嘴基部と足の黄色味が目立つ。特に第1回冬羽への換羽が進むと、何よりも全体の羽色の暗さが遠目からも非常に際立っていた。この画像では上背から肩羽、大雨覆、中雨覆が冬羽に換羽している状態で、三列風切や小雨覆にはかなり幼羽が残っている。

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アライソシギ×オバシギ 第1回冬羽 2014.10.27 千葉県船橋市 1st winter Surfbird x Great Knot Calidris virgata x C.tenuirostris
左のオバシギと比べて、嘴の短さと羽色の暗さに注目。

a0044783_09275804.jpg<同年齢のオバシギ(下)との比較
冬羽に換羽済みの上背から肩羽はオバシギより暗色で、白っぽい羽縁が目立たずよりベッタリと一様に見える。雨覆は幼羽が多く残っているが、こちらも摩耗を考慮してもオバシギより羽縁が狭く、遠目により暗色に見える。



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参考:アライソシギ Calidris virgata 2015.1.19 ロサンゼルス
チドリ類を思わせる短い嘴が特徴。冬羽は腹部を除いて全体に暗く一様な灰褐色。嘴基部と足の黄色が目立つ。件の雑種は全体にオバシギとの中間的な特徴を併せ持っていることがよくわかる。

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アライソシギ×オバシギ 幼羽→第1回冬羽 2014.10.14 千葉県船橋市 juvenile-1st winter Surfbird x Great Knot Calidris virgata x C.tenuirostris
まだ幼羽の多く残る10月中旬の画像。上尾筒は白色で無斑、なおかつ密に暗色斑が並ぶ下背との境界線が明瞭なのもアライソシギの特徴が出ている。さらに翼上面の白い翼帯はオバシギより太めで、初列風切の基部外弁にも白色部がある。

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アライソシギ×オバシギ 第1回冬羽 2014.10.14 千葉県船橋市 1st winter Surfbird x Great Knot Calidris virgata x C.tenuirostris
尾羽はT6(最外側羽)とT5の基部が白く、それ以外の部分が黒っぽくテールバンドを形成する。オバシギでは基部まで一様な灰褐色なので、この点もアライソシギの特徴が出ている。

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アライソシギ×オバシギ 第1回冬羽 2014.10.27 千葉県船橋市 1st winter Surfbird x Great Knot Calidris virgata x C.tenuirostris
腋羽と下雨覆はほぼ真っ白。この点もアライソシギの特徴がよく表れている。オバシギやコオバシギでは暗色斑が散らばり、これほど白くは見えない。

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アライソシギ×オバシギ 第1回冬羽→第1回夏羽 2015.4.6 千葉県船橋市 1st winter-1st summer Surfbird x Great Knot Calidris virgata x C.tenuirostris
この画像ではまだ不完全だが、夏羽は胸から腹に太い黒斑が並び、肩羽が赤褐色で錨型の黒斑がある、オバシギによく似た羽色になった。しかしそもそもアライソシギとオバシギは夏羽の羽色がよく似ているので、これも全く予想通りの結果だった。

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by Ujimichi | 2015-08-14 16:55 | シギチ


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