カテゴリ:カモメ( 182 )

2017年 10月 17日
1988年5月1日 神奈川県三浦市の “カリフォルニアカモメ” 再検証
1988年5月1日に神奈川県三浦市で父と観察した“カリフォルニアカモメ Larus californicus”(以下「本個体」)について近年の知見を元に再検証を行ったところいくつかの疑問点が浮上し、「カモメ L. canus kamtschatschensis 第2回夏羽の可能性が否定できないため種不明」とするのが妥当と考えるに至ったので、以下に要点をまとめてみる。

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この個体は観察当時、大型カモメとも中型カモメともつかない中間的な全体の印象、頭に対して体と翼が長く足が短い体型、灰緑色の脚、などの特徴からカリフォルニアカモメ第3回夏羽と判断した。現在写真を見返しても、カモメとするにはかなり違和感のある、大型カモメ的な印象を受ける。

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▲左はロサンゼルスで撮影したカリフォルニアカモメ成鳥冬羽。全体的なシルエットはよく似ている。

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しかし、今から29年も前の当時とはまるで比べ物にならないほど参考画像等が豊富に見られる現在、北米で撮られた多数の画像、また我々自身のその後の北米での観察経験と照らし合わせて再検証をすると、本個体はまず羽色の面で通常のカリフォルニアカモメのどの年齢にも今一つ一致しにくい組み合わせの特徴が見られ、かつその特徴がカモメ第2回冬羽/夏羽であれば問題なく一致することに気付いた。

さらに体型については、通常カモメでは頭に対して胴が短く小さく見えるため本個体とは印象がかなり異なるが、個体や状況によっては胴が意外に長大に見えるケースもあり、時には本個体と遜色ない比率のように見える画像等を見かけることもある。さらに本個体については口からテグスを垂らしていて嘴が若干開いた状態だった。観察当時はあまり気にしていなかったが、今写真を見直すと上背が盛り上がって見えることからも、ある程度大きな魚を飲み込んでいることで体型が変化し、より胴長なカリフォルニアカモメ的な体型に見えていた可能性も否定できないように思う。

羽色についてもう少し具体的に述べると、本個体では青灰色の肩羽と、褐色味を帯びた淡灰色の雨覆の境が明瞭で、ツートンカラーの上面に見える。このパターンはカモメ第2回冬羽では普通に見られるが、カリフォルニアカモメ第3回冬羽では今のところ確認できていない。また本個体の静止時に見える初列風切は黒褐色だが、光が当たるとやや明るい褐色にも見え、P10-P5までの先端部に明瞭な白斑はない(下の画像)。カリフォルニアカモメ第3回冬羽では通常この部分の黒味がより強く、各羽先端に白斑がある個体が多く、ほとんどこの白斑がない個体でも、P5については明瞭な白斑があるのが普通のようだ(すなわちより成鳥に近いパターン)。もちろん個体差や摩耗褪色も考慮する必要があり、また第3回冬羽のサンプル数が十分とは言えない面もあるので、カリフォルニアカモメでも似た見え方になる可能性も否定できないが、この点についても今のところカモメ第2回冬羽/夏羽の方により合致しやすいように見える。

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ではカリフォルニアカモメ第2回夏羽の可能性はどうかというと、上述のツートンカラーの上面、及び初列風切各羽先端の白斑がないこと、の2点では一致する。しかしながらカリフォルニアカモメ第2回冬羽/夏羽では尾羽が幅広く黒褐色で、次列風切も暗色帯を形成するのが普通のようで、この2点が合致しない。ただし中には冬季に尾羽を換羽して本個体に似たパターンが出ている画像があるため、尾羽と次列風切を早く換羽した第2回夏羽が本個体にある程度似る可能性も考えられるが、雨覆や初列風切を残して尾羽と次列風切がちょうどそのように換羽するかという疑問があり、また本個体は写真が不鮮明なため換羽状態の精査そのものが難しい。

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▲カリフォルニアカモメの第3回冬羽と第2回冬羽。このように第3回ではかなり成鳥に近いパターンになり、第2回では尾羽と次列風切が太い暗色帯を形成するのが普通のようなので、三浦市個体の上面のパターンはこのどちらにも完全には一致しない。

なお当時の現場での観察では、大雨覆の一部に細かい波状斑があったように記憶していて、これが明確であればカモメの可能性をほぼ否定できるが、この点は写真では残念ながら画質が不鮮明なため写っておらず、今となっては29年も前のことでもあるのでどの程度はっきりしたものであったのかの確信が今一つ持てずにいる。カモメとカリフォルニアカモメは、成鳥では嘴のパターンで、第1回冬羽では雨覆等の模様で容易に区別できるが、カリフォルニアカモメ第3回とカモメ第2回ではこれらの点が使えないことが本個体の判断を難しくしているといえる。いずれにしても本個体は体型の印象がカリフォルニアカモメに似るものの、羽色の面でカモメ第2回夏羽により合致する点が多いため、今のところ種不明としておくのが妥当と考えている。

本個体はこれまでカリフォルニアカモメとしてウェブサイトや「カモメ識別ハンドブック」で紹介しているため、観察当時の経験と情報量の不足から、判断がいささか拙速であったと思われる点はこの場を借りて率直にお詫び申し上げたい。ただしこうした先進的な識別については、その時点での情報量の範囲で識別し、状況が変わればその都度再検証するという作業によって発展する側面も確かにある。安全を期しての判断の保留と、未知の領域へ切り込むチャレンジ精神、この両者のバランスや力加減はなかなか難しいところだが、今後も大いに悩みつつも楽しみながら、より精度の高い識別を目指して行きたいと考えている。


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by Ujimichi | 2017-10-17 18:20 | カモメ

2015年 02月 11日
クロワカモメ比較
2005年にカナダのナイアガラで撮ったクロワカモメ(左)と、今回ロサンゼルスで撮ったクロワカモメ(右)とを比べてみると、予想していた通りの興味深い結果となった。これらの左右の画像を、足の長さの印象の違いに注意して見比べていただきたい。どちらが足が長く(あるいは短く)見えるだろうか?

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クロワカモメLarus delawarensis

こう見るとよくわかるように、同じ種でも寒冷地で羽毛を膨らませて休んでいると脛が羽毛に隠れて足が短く見え、温暖な地で動き回っていると脛が裸出して足が長く見えるという、これまでも何度か書いた法則が顕著に表れている。踵関節が左側の画像では体に着いている、または埋もれているように見え、右側の画像では体から離れて見えることにも注目。これは羽毛の膨らみの問題だけではなく、通常外からは見えない膝関節のポジションもある程度影響しているように思う。加えて頭の羽毛の状態などから、嘴も寒冷地のほうが見かけ上相対的に小さく見えることが多い。少し調べてみたところ、ナイアガラの12月の平均最高気温は1.9℃、ロサンゼルスの1月の平均最高気温は18.7℃で、実に17℃近い気温差がある。体感的にはナイアガラは東京の真冬より寒く、ロサンゼルスは東京の初夏のような暖かさだった。

なおクロワカモメに亜種は認められておらず、Olsenの「Gulls」の地理的変異の項目にはNegligible(無視してよい、取るに足らない)という表現が使われていることからも、こうした印象の差はやはり主に気温や観察状況によるものと考えて差し支えないだろう。実際に観察した感触でも、そうした見かけの変化以上の地理的変異があるようには感じられなかった。

カモメ類の足の露出度合いは、あくまでも同条件で比べた場合にはある程度は種の識別の参考になることもある。例えばカナダカモメ→セグロカモメ→モンゴルセグロカモメ→カスピセグロカモメの順に露出が大きくなる傾向はあるように思うし、これらは寒冷地で繁殖する種ほど足の露出を少なくすることで体温を奪われることを防いでると考えると確かに辻褄が合う。しかし現実には、上述のような同種内での状況による変化の大きさについての考慮が不十分なまま識別の考察に使われたり、種の識別点のように過剰に強調して教えられるケースもあるので、特に初心者の方はその辺りにくれぐれも注意して様々な情報に接して頂きたいと思う。

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by Ujimichi | 2015-02-11 19:03 | カモメ

2013年 12月 10日
ミナミユリカモメの識別について
先日愛知県で観察された夏羽のユリカモメが、ミナミユリカモメとしていくつかのブログに掲載されて話題になった。しかし当該の個体は初列風切のパターンから問題なくユリカモメと判断できるので、海外のウェブサイトや図鑑を参考に、翼下面のパターンの違いを図示してみた。 

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ユリカモメ Chroicocephalus ridibundus(左)とミナミユリカモメ Chroicocephalus maculipennis(右二つ)の翼下面の比較図 

 ミナミユリカモメには2亜種が知られており、基亜種maculipennis(中央)は比較的黒色部が発達していて、初列風切の先端部に関しては必ずしもユリカモメとの差は明確ではない。しかし最外側初列風切(P10)の下面の白色部は、ユリカモメのように基部まで長く伸びるのではなく、途中で斜めに断ち切られているため、どちらかというとチャガシラカモメのミラーを少し大きくしたようなパターンであり、ユリカモメを見慣れていればこの違いに一見して目が行くはずだ。

 一方の亜種glaucodes(右)は白色部の発達が顕著で、P10下面に関してはもう少し白色部が基部の方向に伸びる傾向はあるようだが、それでもmaculipennis同様に白色部が基部に達せず断ち切れているか、そうでなくてもユリカモメと異なり基部に向かって急激に狭まる形になっている。さらに先端部の黒斑を欠くため翼端が著しく白っぽく見え、ユリカモメとはかなり違うパターンに見えるはずだ。 

もちろん黒色部・白色部の量に個体差はかなりあって、両亜種の中間的なものもいるようだが、いずれにしろ南米で撮られた画像を多数見ても、少なくとも成鳥であればユリカモメとの違いはかなり明確なようだ。今回の愛知県の個体はこの初列風切のパターンが全くユリカモメそのものであること、換羽状態に異常があるだけでユリカモメを否定する要素が全くないこと、分布からミナミユリカモメが渡来する可能性は非常に低いことなどから問題なくユリカモメと判断できる(ちなみに南米のカモメ類が日本で観察された例は今のところない)。全長は平均上ミナミユリカモメの方が僅かに小さいようだが、数値は大きくオーバーラップしており、ユリカモメの中に小さな個体を見つけることはしばしばあることなので、これも特に問題にはならないと考えられる。 

なお今回の個体は内側初列風切(右翼のP1-P3と左翼のP1-P4)が換羽中で、ここから換羽が始まること自体は正常だが、そこから先、全身への換羽の進行が何らかの原因でほとんど進んでおらず、その結果頭部の黒褐色が褪色して明るめの茶色になり、全身の羽毛もかなり摩耗しているために、周囲の他個体と比べて一見著しく異なった外観を呈しているものと考えられる。

今回、ただのユリカモメだったということでがっかりされている方もいると思うが、しかしいわゆる珍鳥ばかりでなく、こうした普通種の様々な変化を観察するのも野鳥観察の醍醐味の一つなので、ぜひ今後ともこうした個体に注意して観察してみていただければと思う。

参考文献:Howell, S.N.G. and J. Dunn. 2007. Gulls of the Americas. Houghton-MifflinCo., Boston.


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by Ujimichi | 2013-12-10 18:15 | カモメ

2013年 10月 18日
Birder11月号「カモメ入門」
もう何年ぶりか忘れるくらい久しぶりにBirder誌を買ってみた。というのも今月号の第2特集が「カモメ入門」だからなのだが、内容を見てみると、「小形・中形カモメカタログ」(p22-25)に始まり、「大形カモメカタログ」(p26-33)、「探してみよう!珍カモメカタログ」(p34-35)まで、確かな観察眼と豊富な経験を兼ね備えた錚々たる実力派若手ウォッチャーらが担当しているので、初心者にも安心してお勧めできる内容になっている。またタイトルが「入門」とはいえ難しい大型カモメ類の細部の特徴等も正確に解説されているので、中級~ベテランの観察者にもぜひ読んでいただきたい。

a0044783_15552347.jpg正直なところ今回の第2特集が「カモメ入門」とだけ聞いた時は、mongolicusが今時キアシセグロカモメになってたりしたら買わねえぞ(笑)、と思っていただけに、書店で主な執筆メンバーと内容に目を通して一安心。カモメに関してはこれまでどうも内容が正しく伝えられておらずはがゆい思いをする機会が多かっただけに、今回の記事を見るとなんだかようやくこれまでの観察経験等が確実に次世代に継承されつつあるような気がして感慨深い思いだ。国内のカスピセグロカモメ第1回冬羽などの貴重な写真や、その他コアなカモメファンならピンとくるお馴染みの個体も随所に散りばめられているので、拙著「カモメ識別ハンドブック改訂版」とセットでフィールドに持ち出せば(←宣伝^^)鬼に金棒、この冬は一味違ったカモメウォッチングを楽しめること請け合いだ。

ただ今回のカモメ特集で一点どうしても気になったので書いておくと、p36-37の「『カモメ天国・銚子』探鳥ガイド」の中で「あくびをするワシカモメ」という写真があるが、これはワシカモメではない。このページのわずか4点のカモメ写真の一つが間違っているのは残念だが、そんなわけでワシカモメについてはp29の写真と解説を参考にして頂きたい。もうすでに今年もカモメシーズンはスタートしているが、いずれにしてもカモメ観察は漁業活動の邪魔をしないことが鉄則。また車道沿いの観察では交通を妨げたり事故の原因にならないようにくれぐれも注意しながら観察を楽しんでいただきたいと思う。
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by Ujimichi | 2013-10-18 16:13 | カモメ

2013年 04月 05日
打ち止め?
今日の皇居は1日に比べると降りてくるカモメ類の数が目に見えて減っていて、水面にいる個体が数十羽からなかなか増えないまま終わった。時期も時期だし、流石にそろそろ今シーズンは打ち止めか。

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by Ujimichi | 2013-04-05 22:03 | カモメ

2013年 03月 31日
鏡猫
ちょっと放置気味なので、3月26日撮影の画像からウミネコ。あまりに普通種なのでかえって意識される機会は少ないが、ウミネコ成鳥の初列風切P10には個体によっては小さなミラーがあり、少し意識して探すと見つけることができる。この個体ではミラーが外弁と内弁に分かれていてちょっと面白い。

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ウミネコ
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by Ujimichi | 2013-03-31 21:02 | カモメ

2013年 03月 23日
降臨
一昨日久々にかなりエキサイトした個体の画像を1点。カナダカモメが2羽同時に出てきたので集中して撮影しながらも、「ん?こういう時に限って何か他にもいたりして・・・」という考えがふと頭をよぎり、何気なく双眼鏡で左に群をスキャンしていったらこいつが視野に入ってびっくり仰天。当然カナダは放置してバシバシ撮りまくった。いやはやいつの間に降りたのか。

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アイスランドカモメ亜種kumlieni (×カナダカモメ?) Larus glaucoides kumlieni ( X L.thayeri?) 第2回冬羽

とりあえず単なるカナダカモメでも、シロカモメ関係の雑種でもないことは確か。現時点ではアイスランドカモメ亜種kumlieniの濃いめの個体でほとんどよさそうに見えるが、例によって数年後にカナダカモメとの雑種/中間個体との境界線周辺の微妙~な個体になる可能性もなきにしもあらずか。実は昨年よく似た第1回冬羽個体が観察されており、同一の可能性が高いが、どうも出現率は極めて悪いようで、これだけ通っているのに私も今回やっと見ることができた。しかも今回の滞在時間はたったの十数分。東京湾に渡来はしていても、ここには稀にふらっと入ってくるだけの個体なのかもしれない。というわけでぜひとも成鳥になるまで追跡したい個体だが、かなり頑張った上に運も多分に味方しないと厳しいかも?
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by Ujimichi | 2013-03-23 20:03 | カモメ

2013年 03月 13日
ウミネコの虹彩
土曜日辺りはカモメが増えていたらしいので、一昨日はかなり期待して出かけたのだが、結局あまり水揚げをしている様子もなく、数的にはかなりイマイチで残念だった。画像は至近距離にいたウミネコ夏羽3個体。ウミネコの虹彩といえばすっきりした淡色が普通だが、こうしてよく見ると他種でもよく見られるように黒い斑点の入った個体がいたりするのは面白い。

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ところで今日アマゾンから来た宣伝メール―

おすすめ商品 『カモメ識別ハンドブック』

おいおい、著者に勧めてどうする。(^^;)
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by Ujimichi | 2013-03-13 17:32 | カモメ

2013年 03月 10日
大都会
画像は8日撮影の皇居のシロカモメ。正に東京のど真ん中でビルをバックに飛ぶカモメ類というのは、銚子とはまた違った面白さを感じる。

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シロカモメ Larus hyperboreus

それにしても某モズの画像を載せているブログなどを見ていると、世の野鳥カメラマンの人工物嫌いは相変わらずだなあと思う。そもそも少し高い場所から地上を見下ろして餌を探す習性のあるモズ類が、足場として人工物を積極的に利用するのは私の感覚ではむしろ極めて「自然な」こと。もちろんそれが純粋にその人の好みや拘りなら全く構わないのだが、どうもそうではなく単に偏狭なセオリーに過剰に囚われているだけのように感じることも多い。そこまでして猫も杓子も人工物を忌み嫌い、観念的な「自然さ」を求めることがそんなに「自然な」こととは私は思わない。
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by Ujimichi | 2013-03-10 23:04 | カモメ

2013年 01月 31日
タイミルセグロカモメ
一昨日の画像からタイミルセグロカモメ。カモメ類はほんとに数えるほどしかいなかったが、そのうちの1羽がこのタイミルだった。やはり換羽は遅めでP10が伸長中。ところで左右ともP3が欠損しているのは何故だろう?

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タイミルセグロカモメ

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タイミルセグロカモメ
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by Ujimichi | 2013-01-31 20:10 | カモメ