タグ:アイスランドカモメ ( 6 ) タグの人気記事

2016年 01月 17日
アイスランドカモメ…ではない
画像は皇居に時折現れるシロカモメ。どうやら最近これがアイスランドカモメと誤認されて情報が回っているようなのでくれぐれもご注意を。関東ではアラスカ産の亜種(barrovianus)と思われる小さめのシロカモメが珍しくないので要注意です。

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シロカモメ Larus hyperboreus

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by Ujimichi | 2016-01-17 17:43

2015年 04月 08日
アイスランドカモメと不明カモメ
まずは今年の都内のアイスランドカモメ亜種kumlieniの画像を一点。ところでよく考えるとこの個体、今のところ日本国内では最も南で観察されたアイスランドカモメということになるはずだ。

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アイスランドカモメ 亜種kumlieni Larus glaucoides kumlieni

一方で、2009年に山階鳥類学雑誌に論文発表され、日本産鳥類目録第7版にも出典として採用されてしまっている2007年長崎県雲仙市の記録は、多くのカモメ観察者が一目でわかるほどの明らかな誤認例。ネット上の同個体の画像を見てもまず背の色が濃すぎるし、足は黄色いし、初列風切のパターンもいかにも不自然。タイミルセグロカモメまたはセグロカモメの初列風切を単に白くしたような奇妙な外観のこうしたカモメは、かなり稀ながら日本各地でこれまで度々観察されている。アイスランドカモメとは言い切れない―のではなく、アイスランドカモメではないと明確に言い切れるタイプだ。件の論文は確かにカモメをよく知らない人が見れば専門用語や細かい数字を並べた一見いかにももっともらしい体裁なので、一般に権威あると思われている研究誌や目録にもあっさり載ってしまったのだろうが、せめて影響力の強い機関の中にはもう少しカモメ類を適切に見極められる人が増えることを願うばかりだ。

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長崎のものと同タイプの不明カモメ  2002年3月23日 神奈川県
13年も前の画像だが、この個体は発見した時点でアイスランドカモメという選択肢自体思いつかない全くの別物という印象。背の色はセグロカモメと同等。小さめの個体ではあるが、特にタイミルセグロカモメの小さめの個体では普通に見かける範囲のサイズと体型と感じた。畳んだ初列風切は各羽先端の白色部が非常に大きくてほぼ切れ目なく繋がっているが、と同時に内弁側の縁(この画像では上辺部)が不自然に黒ずんでいるのもこのタイプによく見られる特徴で、アイスランドカモメには普通見られない配色。長崎個体も特にネット上の画像で同様の特徴がはっきり現れている(これに対して本エントリ冒頭のアイスランドカモメではこの内弁側の縁が逆に白っぽいぼかしになっていることに注意)。既知の種の中で消去法的に識別すると、人によってはこのような不明個体をアイスランドカモメと見てしまうのも無理はないが、こうしたタイプの存在を予め知っていればそれほど迷うことはないだろう。

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by Ujimichi | 2015-04-08 17:31 | アイスランドカモメ

2014年 04月 07日
写真図鑑のカナダカモメ
再び「比べて識別 野鳥図鑑670」 関連の話題。

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まず上の2つの画像を見て頂きたい。これを見て「右の個体の方が足が長い」と思った方は、ひょっとすると日頃からカモメ類の見方を大きく誤っているかもしれないので、以下の文章は是非とも読んでいただきたいと思う。

というのもこの2つの画像、実は同じ日に同じ場所で撮った同一個体※だからだ。左は14時42分、右は13時52分の撮影で、この間一度も目を離していないし、そもそも似た個体はいないので同一であることは100%確実。1羽のカモメの見た目は、姿勢や羽毛の状態だけでこれほど劇的に変化するという事実をまず理解して頂きたいと思う。

もう少し詳しく説明すると、左の画像は水浴び後の羽繕いの最中で、腹部の羽毛を膨らませているために、脛(すね/tibia)が隠れて足が短く見える状態。右は浅瀬で活発に採餌中で、腹部はもとより全身の羽毛をピタリと寝かせ、脛を突き出しているために足が長く見える状態だ。 カモメ類はこのように、羽繕い/休息時よりも採餌中/緊張時の方が、また寒冷地よりも温暖な地域の方が、羽毛を寝かせていて足が長く見えるという現象が顕著にみられる。特に波打ち際などで足が水に浸かる場所での採餌中には、腹が水面に付くのを嫌うのか理由は定かではないが、足を非常に長く突き出して動き回っていて、一見全く別の鳥のように見えることもよくあるので注意が必要。この辺りは一個体をある程度きちんと追跡観察していればわかることだが、カモメ類の体型を見る際の基本的な注意事項といっていいだろう。

a0044783_13343449.jpgそれでは1羽のカモメ類の足が、見かけ上ではなく本当に長いか短いかをどう見極めればいいのか?というと、上述のように姿勢や羽毛の状態によって見え隠れする脛(すね/tibia)を含めた長さを見るのは誤りの元なので、跗蹠(ふしょ/tarsus)の長さを見る方が正解といえる(それぞれの部位は左の画像を参照)。跗蹠なら羽毛に隠されることがないので公平な判断がしやすく、特に防波堤上のカナダカモメやアイスランドカモメは、周囲に並んでいるセグロカモメ等と直接比べると、跗蹠が短いのがよくわかることが多い(ただし計測値では個体によりオーバーラップがあることにも注意)。
なおかなり以前にBirder誌上で森岡照明氏が、銚子で撮影されたアイスランドカモメ(「日本の野鳥550水辺の鳥」掲載の個体)を検証し、一緒に写っているセグロカモメとの跗蹠長の比較などからアイスランドカモメとの結論を導かれていたが、これは足の長さの見方という意味では至極真っ当なアプローチと言えると思う。

ところが最近出版された「比べて識別 野鳥図鑑670」では、カナダカモメのページにおいて、腹部の羽毛を極度に膨らませた個体の写真に「足の短い個体」という説明がなされ、腹部の羽毛を寝かせている個体の写真には「足の長い個体」という説明が加えられているが、この説明の仕方は言うまでもなく全く間違っている。これでは著者の方は上述のような状況による変化をまるで理解していないように見えてしまうし、何よりも読者が実際の野外観察でこの本の写真と説明に従ってしまうと、同一個体がその時々の状況によってコロコロと別個体(または別種)と判断されてしまいかねず、図鑑としては大変問題のある記述と感じざるを得ない。

また同様にシロカモメのページでも、明らかに腹部の羽毛を膨らませた写真を、足が短く初列風切が長くてアイスランドカモメと誤認されるタイプ―というような説明をしているが、無論これも「タイプ」でもなんでもなく、そういう「状態」でしかないことはここまで書いたことからもよくわかると思う。もちろん海外の図鑑等の計測値からも、カモメ類はどの種も跗蹠の長さ自体にもかなり個体差があるのは事実だが、それと上述のような脛の見え隠れによる見かけ上の長さの変化を混同してはいけない。「極力条件を揃えて比較する」というのはカモメ識別に限らずものの見方の一番の基礎。まして「識別」をタイトルに掲げた図鑑を執筆するのであれば、無用な混乱を助長しないためにもこうした基本的なところをもう少し勉強して頂きたかったと思う。


※冒頭の画像は通称“2号”個体。2009年に見つかったkumlieniタイプの個体のうちの2個体目という意味でこう呼ばれている。2009年時点ではアイスランドカモメ亜種kumlieniと考えられた が、後年の継続観察によって、初列風切のパターン からカナダカモメとの中間個体/雑種と見るのが妥当と判断した。下は参考に冒頭と同じ画像の背景を切り抜く前の状態。

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by Ujimichi | 2014-04-07 19:00 | カナダカモメ

2014年 03月 24日
アイスランドカモメ亜種kumlieni
画像は前に出した気もするが、2005年12月にナイアガラで撮影したアイスランドカモメ亜種kumlieni。寒冷地でのアイスランドカモメといえば、大体こんな風に丸くモコッとした体型に短い嘴と足、というのが定番のイメージ。ところがそんな固定観念を根底から覆す動画が紹介されているのでこちらをぜひ。また拙著「カモメ識別ハンドブック改訂版」p.52にもこうした印象の変化を図解してあるのでぜひこちらも参考にしていただきたい。

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by Ujimichi | 2014-03-24 23:28 | アイスランドカモメ

2009年 04月 05日
ステレオタイプ
結構更新をサボっていたので少し長文を書いてみる。

以前からアイスランドカモメが出るたびにしばしば感じるところだが、日本のバードウォッチャーが一般的に持っているアイスランドカモメのイメージというのは、ごく狭い範囲の、或いは古い情報から作り上げられた、極めてステレオタイプで画一的なものになっている。そのため初心者・ベテランを問わず実際の見え方の多様さに全くついていけていない人が多い。

アイスランドカモメについて昔から言われてきた、サイズが小さい、頭が丸い、嘴が小さい、足が短い、初列風切が長い・・・といった特徴はもちろん原則的にはその通りなのだが、実際には見かけ上これらの各要素のうちのどれが強く出、どれがあまり出ないか、という組み合わせは個体や状況によって様々で、その結果一見した印象も極めて変化に富んでいる。これはもちろん本場の北米東部やヨーロッパの個体でも、これまで日本に出現した個体でも同様だ。この辺を理解するには、状況によって変化する要素に惑わされず、どんな状況でも共通するアイスランドカモメらしさみたいなものを的確に見抜けるようになる必要がある。

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例えばこの2つの画像だが、右はわかりやすい個体、左はわかりにくい個体と思う人が多いかもしれないし、むしろ左はアイスランドカモメであることすら気づかない人がいるかもしれない。確かに右の方が頭が丸く嘴が小さく、初列風切も長く見えるのでそう感じるのも無理はないのだが、ところがこの2つの画像は同一個体なのだ(―通称“2号”と呼ばれている最も出現率の高い個体)。この時は実際ずっと目で追っていたのだが、画像から模様を一つ一つ比べても同じ個体であることは容易に確認できるだろう。というわけで嘴の長さや頭の形などの印象がいかに変化して見えるかをじっくり見ていただきたい。(―ちなみにこの視覚的トリックは、実は昨冬の“メタボガモ騒動”とも共通する問題でもある。)

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こちらはたぶん誰がどう見ても右より左のほうが足が長いと感じるだろうと思うし、左はいわゆる“わかりにくい個体”だと思う人もいるかもしれない。ところがこれも実は左右とも同一個体(4号)なのだ。左は羽毛を極端に寝かせた状態のため、相対的に嘴や足が長く見えている。また鳥の脚は腿の全てと脛の多くの部分、膝関節、股関節が通常外からは一切見えないため、これらの部分の保ち方でも外から見た足の長さは変化しているものと思う。アイスランドカモメやカナダカモメの識別に際して、踵関節(―画像で膝のように見える部分)が身体に着いているかどうかを見る人がいるそうだが、状況を考慮せずに殊更そこだけ注目してしまうと全く見当違いな話になりかねないことは、この画像を見ても非常によくわかると思う。

こうした見え方の変化は一時的なものとは限らず、むしろ休息場所では右の画像のように、採餌ばかりしている場所では左のように延々見えているということも多い。その一方休息場所でも強風時や警戒時には左の画像のような印象に見えるのが普通だ。また寒冷地であればあるほど羽毛を膨らませている確率が高いので図鑑などの写真を見る際にここも注意する必要がある。そしてもちろん実際は休息時と活動時という単純な2パターンということではなく、頸の伸ばし方とか見る角度、周囲の個体との並び方とか光線状態とか背景、そしてもちろん個体差など、とにかく無数の要素が複雑に絡み合って時々刻々と印象が変化するわけだ。

つまりまずはこうした見かけ上の変化をよくよく整理して理解したうえで、それでもなお見えてくるその種らしさみたいなものを見極めていく必要がある。そのためにはやはりカモメを沢山見ることだが、単に数だけでなく一個体を継続していろんな状況で何度も繰り返し見ることも非常に重要になってくる。経験豊富な観察者は「一見してわかった」という言い方をよくするが、これはもちろん何もその場面だけ断片的に見て言っているのではなく、実はその背後に膨大な経験の蓄積があるというのが重要なところだ。

実は私も数十年前には、海外の図鑑等で上の左側の画像のような印象に見えるアイスランドカモメやカナダカモメを見かけると、「え?なんでこれが??」と少なからず混乱していた記憶がある。しかし毎年カモメを見ているうちにそのカラクリがごく自然に飲み込めるようになっていった。この冬のアイスランドカモメは前代未聞の当たり年だったので、来シーズンもこれが続くのか、ぱたりと見られなくなるのかは全くわからないが、興味のある方はぜひとも以上の点に留意して観察を継続してみていただきたいと思う。
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by ujimichi | 2009-04-05 15:22 | カモメ

2009年 01月 26日
念のため
聞くところによると土日は結構人が出ていたそうなので、一応念のため注意書き。

カモメ類の観察は、魚の水揚げ作業、運搬トラックの往来等漁業活動の邪魔をしないこと(また自分が轢かれないこと^^;)、駐車マナー、ゴミは持ち帰る(―当たり前ですが)、などに注意して行いましょう。

それと特にカモメの場合、普通種を普段からよく観察したり、自分なりに調べたりしてある程度基礎を固めてないと、珍しい種だけいきなり見に行ってもなかなかその違いや価値を理解できません。中身をわからないまま他人を当てにして見せてもらってライフリストが一種増えればいいや・・・といった楽しみ方も自由かもしれませんが、それがあまりにあからさまだったり、特に親しいわけでもない人に一々教えを請うたりスコープに入れてもらったりとすると、日頃から自力で観察している人にとっては結構迷惑になってしまうことがありますのでその辺も少し注意してください。

またあえて言うならば、カモメ類の分類には諸説あり、あるカモメを見たとしてもそれが「1種」なのかどうかはどのような分類に拠るかで違ってくる可能性があることも一応理解しておいていただきたいと思います。例えばカスピセグロカモメ(cachinnans)とモンゴルカモメ(mongolicus)は、Olsen"Gulls of Europe, Asia and North America"では同種扱い(Larus cachinnans)になっています。またモンゴルカモメはセグロカモメ(vegae)の1亜種とされる場合もあります。カナダカモメとアイスランドカモメも同種とされる場合があります。

なお今回のカスピセグロカモメが観察されたのは把握している限り1月18日と19日の2日間のみです。
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by ujimichi | 2009-01-26 23:28 | カモメ