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2010年 08月 22日
キンクロハジロ
今年県内で繁殖しているキンクロハジロを見てきた。「渡らない理由」を自分の目で確かめるのも大きな目的だったのだが、公園池に♂成鳥と♀成鳥、雛が各1羽つづいて、やはり予想通り成鳥は2羽とも翼を傷めていた。

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キンクロハジロ♀と雛
雌親の次列風切の欠損に注意。

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キンクロハジロ♀
風切は旧羽のままのようで、羽ばたくとこのように右翼の内側初列風切と次列風切の一部がかなり広範囲に欠損している。

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キンクロハジロ♂
エクリプスへの換羽がかなり進んでいて、風切は伸長中でまだ短い。すでに新羽に変わっているため羽の欠損はないように見えるが、右翼に障害があって上手く動かせないようで、羽ばたくといつも右翼が下がって水面に着いてしまうことが多い。もちろんこれでは渡りは不可能だろう。

ところでこのキンクロハジロの雛の単独行動が目立つことに関して、餌を撒く人がいるからではないかという話があるようで、中にはその餌を採ろうと岸辺にやってくるからだ、と随分と断定調で書いているブログもあるようだが、実際には誰も餌をやっていなくても親子が互いに数十メートルも離れて別行動をしていることや、逆に親子揃って餌をもらいに来ていることもあり、単にこの雌親の雛への執着心が希薄なだけのようにも見える。近年は何を見てもすぐに餌付け問題に結びつける風潮があるが、この辺りについては少なくとももう少し慎重に物事を見る必要はあるように思う。

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キンクロハジロの雛(左)とカルガモの雛(右)
餌が撒かれていない状態での単独行動。

参考までに、昨年自宅近くの川で観察したカルガモ親子の例では、ある日突然6羽の雛のうち1羽(一番小さかった雛)だけが自ら家族から離れて逆方向(上流)へどんどん泳いで行ってしまい、後日何度確認しても結局そのまま行方不明で終わってしまったということがあった。おそらくあのまま完全にはぐれてしまったものと思われ、単独で生き延びた可能性は限りなく低いように思う。このカルガモ親子は特に餌付けに頼っているような様子はなく、もちろん人が撒いた餌につられてはぐれたという状況では全くない。人は既存の知識の範囲外の現象に出くわすとどうしてもそれを“異常”と捉え何かしら理由付けをしたくなるものだが、実際には生き物を観察しているとこのようにすぐには説明のつかない状況に出くわすことも珍しくないということも、それなりに念頭に置いておく必要はあるだろうと思う。
by ujimichi | 2010-08-22 14:49 | カモ


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