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2013年 02月 24日
逃亡中?
コスズガモはいなくなってしまったようだが、渡去にはちょっと早いし、果たしてどこへ行ったのか?ところで―

逃亡中?_a0044783_19405728.jpg1.背中が縞模様なので識別できる。
2.頬が膨らんで見えるのが特徴。
3.次列風切が白いのが特徴。
4.顔の光沢が紫、スズガモは緑。

今回コスズガモの特徴として、ネット上ではよくこんなことが書かれていたが、これらはもちろん全て間違っている。まず1ではスズガモとの区別がついていないことになるし、2は何度も書いているように全くの誤り。3は「次列風切だけが白い」または「初列風切が白くない」と言わないと意味が違ってしまう。4は紫が「出やすい」だけで、両種とも光線状態次第で容易に紫にも緑にもなる。

このような誤った、または不正確な特徴があちこちでそのまま書かれている現状から察するに―珍鳥と聞いて現場に駆けつけ、「どれですか?」と先客に教えてもらい、ひたすら写真を撮り、あとは図鑑やネットで読んだ、或いは人から聞いた特徴を書き添えて出来上がり―という感じの人がやはり多い印象を受ける。

もちろん特に初心者にとって、図鑑等から基礎的な知識を得ることはまず必要なので、その勉強過程としてはこれでもいいのかもしれないし、また引用には引用の役割ももちろんあると思うが、とはいえただ撮った画像に受け売りの知識を添える作業の繰り返しだと、実際のところなかなか観察力の向上や正しい理解にはつながらないと思う。何しろ時には図鑑に書いてあることが間違っている場合だってあるのだから。

そこでせっかくわざわざ現場に出向いたのなら、少々稚拙でも、また多少は間違いがあっても、自分の目にはどう見えたのか、どう感じたのかという素直な感想を自分の言葉で書く努力をする方が、正否をよく確認もせず闇雲に受け売りだけを並べるよりは、自分の目で対象を観察する力が養われていく可能性がまだあるように思う。それには何よりも現場で周囲の普通種も含めてよく見た方がいいし、もし撮影主体にするにしても、せめてせっかく撮った画像はよく見返すなり他種の画像と比べるなどして、ぜひとも後々の理解のために有効に活用してみてほしいと思う。

ついでに書くと、あちこちで盛んに書かれていた「観察難易度9」というのはあるweb図鑑サイトからのコピペでしかなく、少なくとも関東に限って言えばそこまで珍しい鳥ではない。「関東では7年ぶり」というのも、もちろん単に情報が流れて人が集まったのが久ぶりというだけ。実際は近年も毎年どこかに少数が渡来していると考えていいだろう。また最後に冒頭の4の頭部の光沢についてちょっと補足すると、Collins Bird Guide 2nd editionでは「more purple than green sheen」という具合に比較級を用いて書かれていて、一見何気ない最小限の短文ながら、ここはさすがよく解った上での的確な表現だと思う。
by Ujimichi | 2013-02-24 19:59 | コスズガモ


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