2007年 12月 07日
ムード的な“餌やり防止キャンペーン”に対する疑問
どうも世の中が変な方向に行っている気がしてならないので、しつこいようだが再度このネタをとりあげる。そこで、まずはじめにはっきりさせておきたいのだが―

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「カモの餌付けはしばしば世間が言うほどの善行でもなければ悪行でもない。」

簡単に言えばこれが私の餌付けに対する基本的な考え方だ。


思い返せば数十年前には餌付けを善行と捉える人の割合が今より随分高かったようで、不忍池でも上野動物園側がむしろ率先して盛大に給餌を行っていて、カモが池一面を覆い尽くすほどの過密状態だった。その後、動物園側が給餌を止めてから後にも、自転車の荷台に仰天するほど大量のパンを満載し、餌付けというよりほとんどパンの大量不法投棄?と見まごうようなものすごい餌やりを日課にしているようなおじさんをよく見かけたものだ。

無論、私も確かにあれはあれでいろいろな意味で決して好ましい状態ではなかったように感じるのだが、しかし、どうやら最近はその反動なのか知らないが、今度は根拠の曖昧な餌付けバッシングが一気に流行しつつあるようで、世の中極端すぎて全く付き合いきれないよな、というのが正直な感想だ。ここ最近、餌をやるとカモが太って飛べなくなる、北へ帰れなくなる、夏の猛暑で死んでしまう、猫に襲われる、等々といったことがまことしやかに語られ、また一部メディアにも取り上げられたらしく、だから餌付けは止めましょうというキャンペーンが展開されているようだが、果たしてそれら餌付けの弊害として言われていることのうちどこまでを、誰がどんな風に具体的に確かめたのか、そのあたりがさっぱり見えてこない。どう見ても外見上普通のカモとしか見えない写真が堂々と「餌付けで太ったカモ」として紹介される現状を見ていると、どうも事実関係の把握が極めて曖昧なまま、「こういう心配があるのではないか?」程度の発想で運動だけが性急に盛り上がっているように思えてならず、この辺がなんとも嫌な感じがする。そもそも他人の行動を制御しようというキャンペーンを展開するには、まず第一に正確な事実関係の把握が何よりも不可欠であり、その上できちんと筋の通った説明がなされなければ話にもならないと思うのだが、そうした最も重要な部分がいくらなんでも曖昧すぎるのではないかと思う。

ちなみに、大量の餌が撒かれているところでは、見かけからはわからなくてもそれ相応にカモが太っているということは理屈の上からはもちろんありえる話だと思う。しかもカモというのは元々ある程度太って見える体型をしているものなので、「餌付けで太っている」と言われればああ確かにそうかなと思ってしまう人が多いだろう。しかし、ここで鳥類画家の立場から一言言わせてもらえば、鳥というのは全身が羽毛で覆われているために、太っている、痩せている、ということを外見から判断するのが実は極めて難しい生き物なのだ。餌付けされているカモが太っていると主張し、ましてやそれによって運動を展開しようというのであれば、せめて餌付いていないものと厳密に公平な条件で、しかも多数の個体で比較するくらいのことはしないと話にならないと思うのだが、そうではなくてむしろダウンジャケットを着ている人を肥満呼ばわりしているのとあまり変わらないレベルの、極めて主観的な言い方やあやふやな伝聞的な言い方ばかりがやたらと目立つのが非常に気になるところだ。また、そうした言説が一旦新聞やテレビなどのメディアに出てしまうと、実は根拠の不確かなものであってもあたかも既成事実のように一般に認知されてしまう危険が大きく、この辺も非常に恐ろしいところだ。

下の2枚の写真は10月21日に多摩川で撮影した1羽のヨシガモの、たかだか1分以内の姿だ。鳥というのは羽毛の状態や姿勢一つでこれほど体型が劇的に変化して見えるものなのだが、キャンペーンを推進する方々はこの写真をどう捉えるのだろうか。このヨシガモは実際は餌付いていないのだが、もし「左が餌付けで太っているカモです」と嘘を言ってもあっさり納得してしまう人が案外多いのではないかと思う。

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この前も書いたとおり、私は餌付けをわざわざ奨励する気などまるでないし、餌付けに問題がないと主張しているわけでも全くない。むしろ、もし本当にきちんとした事実認識に基づいて餌付けを問題にしている方がいるのであれば、それはそれでもちろん傾聴すべきところは多々あると思うのだが、しかし少なくとも現時点で方々で目にする餌やり自粛?防止?キャンペーンに関しては、私の目には極めてムード的かつ押し付けがましいものにしか映らず、到底賛同する気にはなれるようなものではない。世の中というのはしばしばあるきっかけで「これは悪いことだ」ということになると、中身が落ち着いて吟味されることなく極端から極端へとわーっと走り出して歯止めが利かなくなり、無意味な揉め事が増えたり本来全く傷つく必要のない人が傷ついたりということがよく起こるが、そういうおかしなことにはなってほしくないものだと思う。

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最後にもう一つ参考画像。先ほどのヨシガモと同日同所で撮ったもので、コガモ3羽とヒドリガモ1羽が写っている。これらも餌付いていないのだが(コガモは普通に見られるカモの中でも最も餌付きにくい種だ)、どう見えるだろうか?餌付いていないから痩せて見えるだろうか?いろいろな場所でカモを見る機会がある方は、ぜひ自分の目で事実を確かめてみてほしいと思う。



※ちなみに冒頭のオナガガモの画像だが、足が極端に小さくて変な体型に見えるのは広角レンズによる歪みであって、餌付けでおかしくなったわけではないので念のため(^^;

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by ujimichi | 2007-12-07 21:23 | 餌やり規制問題について


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