2008年 01月 05日
“メタボガモ”のからくり
ちょっとカモ見に行ってきたので、そこで撮ったオナガガモの画像から。多くの鳥屋さんは百も承知のことだとは思うのだが、せっかく画像があるので一般向けに基礎的なところを改めて書いておこうと思う。
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「頸を伸ばして緊張状態にあれば痩せて見え、逆に首を縮めてリラックスしていると太って見える」というのは、鳥の外形を見る時のもっとも基本的な注意事項だ。観察してみるとわかるが、その変化は頭で考える以上に劇的なものだ。

a0044783_21334.jpgこの理由の一つは、全身を覆っている羽毛が緊張状態では皮膚と平行に、つまり「ピタッと寝ている」状態になり、リラックス時は逆立って膨らんだ状態になるということ。わかりやすく言うと、最大限に羽毛を逆立てた場合には、体各部の羽毛一本一本のほぼ長さ分だけシルエットが膨張して見えうる、ということだ。上の左の画像は「いくらか膨らんでいる」程度の状態だが、羽繕い後の身震いをした瞬間などはこれよりさらに顕著に全身が膨張して見える。


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▲頭部の羽毛の流れに注目すると、緊張時は羽毛が骨格にぴったりと張り付くように寝ており、休息時は浮き上がっていることがわかる。これにより頭部の大きさからして一回りも二回りも違って見える。

もう一つの理由は頸のS字構造によるもの。骨格標本などを見ればなおよくわかると思うが、鳥の頸の骨格というのはS字カーブを描いており、これにより自由自在に伸び縮みしたり顔の方向を変えたりといった複雑な動きをすることができる。特にカモの場合は頸が長いのでこのS字が深く顕著で、頸を縮めるとこれが大きな“胸部の膨らみ”となって現れる。これを見て「カモがエサやりで太って鳩胸になってしまった」などと言う人もいるそうなのだが、もちろん実際はカモのほうが頸が長い分だけ、休息時に見られる胸部の張り出しも元々大きいのだ。

昨年の“メタボガモ報道”ではこうした極めて簡単なトリックが利用され、普段鳥を見ない一般の人たちの多くははすっかり騙されてしまったのだ。もっともそうした言説を流した人たちも必ずしも故意ではなく、自身もこのトリックに翻弄されていたケースも多々あるのかなとは思うのだが。

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左が普通に休息しているところで、右は犬が傍を通りかかって警戒しているところ。私自身も経験から頭では解っているつもりなのだが、改めて多数の個体を様々な状況で観察してみると、状況による見え方の変化の激しさに驚かされる。ちなみにこれらはどちらもかなりエサやりが盛んに行われている同じ公園池で撮ったもので、左右は別個体なのだが、いずれにしろこの二つのどちらが実際に太っているとか痩せているとかいうことは見た目からは全く判断できない。
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by ujimichi | 2008-01-05 00:29 | 餌やり規制問題について


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