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2008年 05月 28日
「ホイグリン系」と'taimyrensis'
a0044783_14433819.jpgカモメは全くシーズンオフだが、「ホイグリン系」という言葉を元々使い始めた経緯等について、ちょっと上手く伝わっていないところもあると思うので少し書いておこうと思う。以下ちょっとややこしい話になってしまうが興味のある方はどうぞ。

まず、私などがホイグリン系という言葉を使い始めたのは、実は元々は‘taimyrensis’=ホイグリン系という意識ではなかった。むしろ90年代に主流(?)だったようにtaimyrensisをホイグリンカモメの亜種とした場合を視野に入れると、それとさらにセグロカモメとの中間的な個体(雑種)、及びそのどちらなのか判断しかねる様々な個体を暫定的に総称する必要性に迫られてのことだった。つまりその場合、亜種名として使われている「taimyrensis 」は重複してしまうので必然的に避ける形になったわけだ。

実際フィールドではその手の個体を見かける機会は多いし、「足の黄色いこのカモメは何ですか?」といった質問を受ける度に毎回長々と説明していたらきりがない。また、「足の黄色いセグロでしょうか?」と聞かれることもあるが、やはり単に足が黄色いだけでなく他にもホイグリン的な特徴・傾向を大なり小なり持っている場合が多い。そこで、「純粋なセグロでもモンゴルでもないし、といって『ホイグリンカモメ(亜種taimyrensis)』と言っていいのかもわらないけれど、とにかく少なくともホイグリンカモメに関係のある個体ですよ」という意味のことを簡単に一言で表すために、「ホイグリン系」という呼び方を自然とするようになった。

a0044783_065838.jpgしかし近年(2000年代)は、Yésou(2002)やOlsen(2003)のようにtaimyrensisを亜種とせず、その代わり‘taimyrensis' という表記を結局「ホイグリン系」とほぼ同じような意味で使うことが普通になっている。この流れに従うならば、現在では「ホイグリン系」は'taimyrensis' という呼び方にそのまんま置き換えてほぼ差し支えないと思う。ただ、私は学名そのままというのも固い感じがしてどうなんだろう?という思いも若干あって、最近でも一般に通りのいい「ホイグリン系」という言葉をしばしば使っている。しかしその場合でも俗称的な曖昧さを回避するためにも同時に‘taimyrensis' もなるべく併記するようにしている。
▲大まかな流れのイメージを書いてみた。書いた後で気づいたがそれぞれの実際の分布面積や個体数は全く反映していないのでその点は誤解なきよう・・・(ちなみに銚子で越冬するのは圧倒的多数がセグロカモメLarus vegae)。楕円をわざと重ねてあるのは連続的で線引きが難しいことを示したもの。

ところで、「系」という言葉は、「消化器系」「生態系」「南方系」「寒色系」「サラブレッド系」、果ては「アキバ系」だの「癒し系」だのに至るまで、似たものやつながりのあるものを大凡まとめて呼ぶ際に極めて幅広く使われる平易な日本語なので、その意味で使う分には「ホイグリン系」という使い方も私は特に日本語として問題ないと思う。ただとはいってもあくまで冒頭に書いたような経緯から便宜上使い始めた言葉なので、あまりにも当たり前のようにホイ系ホイ系とあちこちで使われ始めた時には、正直なところちょっとどうしたもんかな・・・という思いも確かにあった。

また(植物)分類学には「種」の上に「系」という階級が元々あるので、分類学に関心の強い方の中には、亜種よりも下のランクである‘taimyrensisis’を“ホイグリン系”と呼ぶことに違和感があるという意見もあるようだ。私はこの場合の「系」自体に普段触れる機会がほとんどないので、この視点は正直ちょっと思いつかなかった。植物観察を趣味とする人でも「科」や「属」に比べて「系」を意識する機会は極めて少ないのではと思うし、通常カモメを観察している人がその「系」と「ホイグリン系」の「系」を混同するともあまり思えないのだが、確かに使用する場によっては誤解される可能性もないとは言えず、言われればなるほどそれも一理あるかとは思う。また、セグロとホイグリンの中間であるものを「ホイグリン系」と呼ぶのは、セグロ(日本)側からものを見ているニュアンスがあり、少々客観性を欠く呼び方のような気もしないでもない。

そんなわけで、親しみやすさという点では「ホイグリン系」も捨てがたい気もするのだが、taimyrensisを亜種としない近年の流れからも、「ホイグリン系」を殊更使わなければならない必然性も薄れている感があるので、特に正確を期す必要がある場合等にはなるべく'taimyrensis'と呼んだほうが現在は適当かもしれないと思っている。

ちなみにカモメに関わっていると、こういったややこしい呼び方や区切り方の問題についても避けて通れない面があるので私もたまに触れることがあるが、とはいえ私自身はあくまで主にそれぞれのフォームの個性の強さと同時に多様性や連続性、といったものを眺めることそのものが面白くて観察しているので、分類に関して言えば極端な話大型カモメ類が一種だろうと何十種だろうと実は個人的にはさほどの拘りがあるわけではない。

※ちょっと現在他の用事も多く余裕がないので、この手の込み入った話についてはコメントは一応OFFにさせて頂きます。Sさんのブログでのご指摘は大変参考になりました。m(__)m
by ujimichi | 2008-05-28 02:40 | カモメ


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