MU's Diary
2017-12-09T18:11:25+09:00
Ujimichi
氏原道昭のブログです。鳥・トンボその他の観察地域は主に関東地方です。
Excite Blog
「フィールド図鑑日本の野鳥」の“キアシセグロカモメ”について
http://ujimichi.exblog.jp/238063379/
2017-12-09T18:11:00+09:00
2017-12-09T18:11:25+09:00
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Ujimichi
モンゴルセグロカモメ
まずモンゴルの識別についてこの図鑑では、「足にピンクみのある個体が多く、わずかに黄色みがある程度」「成鳥冬羽の頭部は褐色斑があまりない」のほぼ2点しか書かれていない。嘴の黒斑、換羽時期、初列風切のパターンへの言及がないので、頭の斑の少ないタイミルセグロカモメなどをモンゴルと誤認する例が増える恐れがある。紙面が限られるのは解るが、もう少し良い方法はあったように思う。
そしてカスピについては一つ決定的な誤記があり、「外側初列風切裏側の白斑が大きい」と書きたかったと思われる箇所が、「外側尾羽の裏側の白斑が大きい」になっている。さらに問題なのはその前に「亜種キアシセグロカモメ(=モンゴル)とほぼ同じだが」と書かれていること。つまりこの図鑑に従うと、「モンゴルとほぼ同じで初列風切裏側の白斑が大きい」のがカスピということになってしまうが、実際は全く違う。
カスピの特徴として重要なのは、直線的で長い嘴、細長い足、長い首などが醸し出す、ハシボソカモメを連想させるようなかなり独特のjizzで、それと翼のパターン等を併せて総合的に判断して識別する必要がある。下の画像は上がカスピ、下がモンゴル。ストレートで長い嘴が醸し出すカスピの独特な印象に注意して頂きたい。
しかしながら今回の図鑑では、こうしたjizzが解説文でもイラストでも表現されていない。海外に目を向ければ、当然ながらCollins Bird Guideなどではイラスト・解説共にこの特徴がしっかり表現されているので、ここにはやはり大きな隔たりを感じる。しかも、モンゴルの中には初列風切の白色部が多く、カスピに似たパターンの個体もいることが繁殖地の調査からも知られているので、今回の図鑑に従うと、そうしたモンゴルがカスピと安易に誤認されかねない。
カスピは繁殖地が日本から遠く、渡来はかなり稀なため慎重な判断が必要なだけに、この図鑑の不正確な記述が与える影響は気になるところだ。そしてこの件は決して「情報不足による間違いが十年後にわかる」といったケースではなく、むしろ十年前から広く知られている基本的な特徴すら正しく反映されなかったために、識別を後退させてしまう格好になっていることが、長年カモメの野外識別に取り組んできた一人としては大変残念である。
初列風切の白色部の多いモンゴルセグロカモメと思われる個体 2006年12月9日 中国・上海
「フィールド図鑑日本の野鳥」に従うとこのような個体は全てカスピと判断されてしまう可能性が高いが、嘴の長さや形状等のjizzからはカスピの可能性は低いと思われる。一方でモンゴルとしても翼のパターンは典型的ではないため、日本での観察であればセグロやタイミルの可能性も含めて慎重な検討が必要と思う。
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「フィールド図鑑日本の野鳥」のコスズガモについて
http://ujimichi.exblog.jp/238054459/
2017-12-06T20:00:00+09:00
2017-12-06T20:00:50+09:00
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Ujimichi
コスズガモ
まずコスズガモについて真っ先に指摘しなければならないのは、「スズガモより頬部が膨らんで見える」というこの図鑑の説明は明らかに誤りであるということ。この“識別点”は、同解説者の方が1998年の写真図鑑から一貫して同様のことを書かれているもののようだが、実際にはスズガモ、コスズガモ共に状況により大きく変化する特徴であり、種の識別点には全くならない。下の写真のカモは全てスズガモだが、これを見ても、「頬が膨らんで見える」のがコスズガモに限った特徴でないことがたちどころにわかるだろう。※
さらに下の写真は同一個体のコスズガモを同日内に撮影したもの。状況により頬の膨らみがいかに変化するかを見て頂きたい。
今回この図鑑で、この“識別点”がイラスト入りで改めて強調して解説されてしまったことは残念でならない。コスズガモはまだしも、スズガモは東京湾で千~万単位の大群が越冬する普通種。少しその気で観察すれば、矛盾に気づくのはさほど難しいことではないと思うのだが。
もう一つわかりづらかったのが、解説本文の頭の形の記述。「後頭部が膨らんで見える」とあり、これが「前頭部より後頭部が高い」というコスズガモの特徴のことを指しているらしい(?)と気付くまでに、私はかなり時間がかかった。「後頭部が膨らんで見える」だと、カワアイサの雄のように後方に膨らむ形状を想像してしまったからだ。この点は読み手によっても個人差はあるかとは思うが、どのくらいの割合の読者がこの文からあのコスズガモの頭の形状をイメージできただろうかという気はする。そして後頭部が高いだけでなくごく小さな突出部があることや、後頸にかけての輪郭が直線的に見えることへの言及はない。
さらにこの図鑑では、コスズガモの重要な特徴である翼帯の色について触れられていない。イラストでは描き分けられているが、一言の説明も矢印もなく、これでは予めその特徴を知っているか、かなり観察力に長けた人でないと違いを読み取るのは難しそうだ。この図鑑について「ベテランから見れば間違いはあるが、初心者が持つにはいい」といった意見も聞くが、こうした重要な点に触れていないのは初心者にはむしろ不親切で使いづらいのではと感じてしまう。同様のことがサイズについても言え、「スズガモより小さい」ことが書かれていないので、和名と全長から小さいことを読み取らなければならない。
そして雌については「頭部は茶褐色で光沢はない」としか書かれておらず、種の識別に役立つ情報は一言も書かれていない。これも初心者はイラストから何とか読み取る以外に方法はなく、ここでもむしろ初心者に優しくない図鑑との印象を受けてしまった。しかも、このコスズガモの解説の下には、もう一種分解説が入りそうなほどの大きな余白が残されている。これだけの余裕があって、なぜ最小限の重要な特徴さえ解説されていないのだろうと思うと本当に残念でならないし、しかもその一方では最初に書いたように、「頬の膨らみ」という誤った識別点がイラスト入りで解説されているのは理解に苦しむ。
今回はあえてコスズガモに絞って書いたが、この図鑑に広く目を通すと、大なり小なりこのコスズガモと類似した問題点があちこちに散見される。私も識別に関心の強い絵描きの一人として、本来ならイラストによるこうした図鑑は応援したいところだが、残念ながら安心してお勧めできる内容とは言い難いのが正直なところだ。この図鑑についてはすでに多くの方がご意見を述べられているが、気付いた問題点はこうしてそれなりにきちんと一般に告知していく必要はあるように思う。
※興味深いことに、2015年にHELM社から出版されたReeber著“WILDFOWL”には「スズガモの方が頬が膨らむ」という、全く真逆の記述とイラストがあり、これも状況による変化を種の特徴と誤解した結果ではないかと考えている。
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1988年5月1日 神奈川県三浦市の “カリフォルニアカモメ” 再検証
http://ujimichi.exblog.jp/237891499/
2017-10-17T18:20:00+09:00
2017-10-17T18:20:57+09:00
2017-10-17T18:20:57+09:00
Ujimichi
カモメ
この個体は観察当時、大型カモメとも中型カモメともつかない中間的な全体の印象、頭に対して体と翼が長く足が短い体型、灰緑色の脚、などの特徴からカリフォルニアカモメ第3回夏羽と判断した。現在写真を見返しても、カモメとするにはかなり違和感のある、大型カモメ的な印象を受ける。
▲左はロサンゼルスで撮影したカリフォルニアカモメ成鳥冬羽。全体的なシルエットはよく似ている。
しかし、今から29年も前の当時とはまるで比べ物にならないほど参考画像等が豊富に見られる現在、北米で撮られた多数の画像、また我々自身のその後の北米での観察経験と照らし合わせて再検証をすると、本個体はまず羽色の面で通常のカリフォルニアカモメのどの年齢にも今一つ一致しにくい組み合わせの特徴が見られ、かつその特徴がカモメ第2回冬羽/夏羽であれば問題なく一致することに気付いた。
さらに体型については、通常カモメでは頭に対して胴が短く小さく見えるため本個体とは印象がかなり異なるが、個体や状況によっては胴が意外に長大に見えるケースもあり、時には本個体と遜色ない比率のように見える画像等を見かけることもある。さらに本個体については口からテグスを垂らしていて嘴が若干開いた状態だった。観察当時はあまり気にしていなかったが、今写真を見直すと上背が盛り上がって見えることからも、ある程度大きな魚を飲み込んでいることで体型が変化し、より胴長なカリフォルニアカモメ的な体型に見えていた可能性も否定できないように思う。
羽色についてもう少し具体的に述べると、本個体では青灰色の肩羽と、褐色味を帯びた淡灰色の雨覆の境が明瞭で、ツートンカラーの上面に見える。このパターンはカモメ第2回冬羽では普通に見られるが、カリフォルニアカモメ第3回冬羽では今のところ確認できていない。また本個体の静止時に見える初列風切は黒褐色だが、光が当たるとやや明るい褐色にも見え、P10-P5までの先端部に明瞭な白斑はない(下の画像)。カリフォルニアカモメ第3回冬羽では通常この部分の黒味がより強く、各羽先端に白斑がある個体が多く、ほとんどこの白斑がない個体でも、P5については明瞭な白斑があるのが普通のようだ(すなわちより成鳥に近いパターン)。もちろん個体差や摩耗褪色も考慮する必要があり、また第3回冬羽のサンプル数が十分とは言えない面もあるので、カリフォルニアカモメでも似た見え方になる可能性も否定できないが、この点についても今のところカモメ第2回冬羽/夏羽の方により合致しやすいように見える。
ではカリフォルニアカモメ第2回夏羽の可能性はどうかというと、上述のツートンカラーの上面、及び初列風切各羽先端の白斑がないこと、の2点では一致する。しかしながらカリフォルニアカモメ第2回冬羽/夏羽では尾羽が幅広く黒褐色で、次列風切も暗色帯を形成するのが普通のようで、この2点が合致しない。ただし中には冬季に尾羽を換羽して本個体に似たパターンが出ている画像があるため、尾羽と次列風切を早く換羽した第2回夏羽が本個体にある程度似る可能性も考えられるが、雨覆や初列風切を残して尾羽と次列風切がちょうどそのように換羽するかという疑問があり、また本個体は写真が不鮮明なため換羽状態の精査そのものが難しい。
▲カリフォルニアカモメの第3回冬羽と第2回冬羽。このように第3回ではかなり成鳥に近いパターンになり、第2回では尾羽と次列風切が太い暗色帯を形成するのが普通のようなので、三浦市個体の上面のパターンはこのどちらにも完全には一致しない。
なお当時の現場での観察では、大雨覆の一部に細かい波状斑があったように記憶していて、これが明確であればカモメの可能性をほぼ否定できるが、この点は写真では残念ながら画質が不鮮明なため写っておらず、今となっては29年も前のことでもあるのでどの程度はっきりしたものであったのかの確信が今一つ持てずにいる。カモメとカリフォルニアカモメは、成鳥では嘴のパターンで、第1回冬羽では雨覆等の模様で容易に区別できるが、カリフォルニアカモメ第3回とカモメ第2回ではこれらの点が使えないことが本個体の判断を難しくしているといえる。いずれにしても本個体は体型の印象がカリフォルニアカモメに似るものの、羽色の面でカモメ第2回夏羽により合致する点が多いため、今のところ種不明としておくのが妥当と考えている。
本個体はこれまでカリフォルニアカモメとしてウェブサイトや「カモメ識別ハンドブック」で紹介しているため、観察当時の経験と情報量の不足から、判断がいささか拙速であったと思われる点はこの場を借りて率直にお詫び申し上げたい。ただしこうした先進的な識別については、その時点での情報量の範囲で識別し、状況が変わればその都度再検証するという作業によって発展する側面も確かにある。安全を期しての判断の保留と、未知の領域へ切り込むチャレンジ精神、この両者のバランスや力加減はなかなか難しいところだが、今後も大いに悩みつつも楽しみながら、より精度の高い識別を目指して行きたいと考えている。
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メリケンキアシシギの上尾筒
http://ujimichi.exblog.jp/22828636/
2016-05-20T21:49:01+09:00
2016-05-20T21:49:01+09:00
2016-05-20T21:49:01+09:00
Ujimichi
シギチ
上尾筒の横斑に注意。
鼻溝は長くて嘴基部から2/3付近まであり、メリケンキアシシギの特徴を示す。]]>
アイスランドカモメ…ではない
http://ujimichi.exblog.jp/22206883/
2016-01-17T17:43:00+09:00
2016-01-17T17:44:16+09:00
2016-01-17T17:43:11+09:00
Ujimichi
未分類
シロカモメ Larus hyperboreus
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11月2日にいよいよ発売予定! 『決定版 日本のカモ識別図鑑』
http://ujimichi.exblog.jp/21736547/
2015-10-13T20:53:00+09:00
2015-10-13T22:33:53+09:00
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Ujimichi
未分類
画像は先週撮影したオナガガモ♂幼鳥。秋も深まって、北国から続々とカモが渡ってきている。父との共著で11月2日にいよいよ発売予定の「決定版 日本のカモ識別図鑑」(誠文堂新光社)は、お陰様で反響が大変大きく、既に発売前から沢山の方がご予約いただいている。
「秋に渡って来たばかりのカモの♂は、エクリプスといって一見♀のような地味な色をしているので、見分けがとても難しい」・・・というような説明は昔から繰り返し当たり前のようにされてきた。しかし当然のことながらそれだけでなく、この時期のカモの群れには沢山の幼鳥が混じっている。しかも幼鳥にも♂♀があるので、実際はさらに複雑だ。
ところがなぜかこの事実はこれまで意外と放ったらかしにされていて、少なくとも一般に向けて秋のカモの説明がなされる際には、エクリプスの話ばかりで幼鳥のよの字も出てこないことも未だに多いようだ。というよりも、できればより正確に幼鳥を含めた説明をしたいという気持ちはあっても、幼鳥の識別を詳しく取り上げた図鑑がないことから、対応に苦慮してこられた指導者の方も多いのではないかと思う。また少し違う角度から言うと、これまでの「エクリプスは難しい」というイメージは、沢山混じっている幼鳥が正しく区別されずに一緒くたにされてきたことが大きな原因とも考えられる。
まさにこの辺りに大きくメスを入れるのが、この「日本のカモ識別図鑑」の大きな狙いの一つで、これまでなかなか詳しく扱われてこなかった幼鳥やエクリプスの識別に関するノウハウが、豊富なイラスト・写真とともに、まさに前代未聞のボリュームでぎっしりと詰め込まれている。例えば最も身近な水面採餌ガモの一つコガモだけでも7ページ、イラスト13点に写真14点という充実ぶり。しかもアメリカコガモはまた別で6ページ。加えてコガモとアメリカコガモの識別には特別にさらに3ページを割いている。この図鑑を片手に幼鳥やエクリプスの識別に挑戦する面白さに目覚めると、ただただ地味で皆同じに見えると敬遠していたこの時期のカモの群れが、一転して宝の山に見えてくるはずだ。
とはいえもちろん、初心者にとっては冬季の色とりどりの生殖羽の美しさの方がまずはとっつきやすいと思うし、難しい識別の話はどうも苦手、という方もいるだろう。そんな方はまずは気楽にイラストや写真をただ眺めて楽しむつもりでこの図鑑を入手して頂いても、もちろん存分に楽しめる充実した内容になってる。そして実は、そうやって力を抜いて目で楽しみながら、わかりやすいものから少しづつ印象に残していくことは、識別の基礎を作る上でも一番自然で無理のない方法だ。そうしていくうちにいずれ興味が湧いてきたら、ぜひ改めて幼鳥やエクリプスの識別にも挑戦してみて頂きたい。もちろん種や状況にもよるが、特に難しいことを考えなくても、一目で「あっこれは幼鳥!」とピンとくるような機会も意外と多くなるはずだ。
なお「決定版 日本のカモ識別図鑑」のFacebookページも公開しているので、こちらもぜひよろしくお願いします。
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Birder9月号のトウネンの記事について
http://ujimichi.exblog.jp/21574791/
2015-08-23T17:55:00+09:00
2015-08-26T05:12:32+09:00
2015-08-23T17:55:07+09:00
Ujimichi
シギチ
ヨーロッパトウネン Calidris minuta
今日は書店に寄って久しぶりにBirder誌を購入。若手鳥見グループによる「Young Gunsの野鳥ラボ」は、これまでも先進的で優れた識別記事を掲載しているので応援している、というか私はほぼこれ目当てで買っているといっていい(笑)のだが、ただ今回9月号のトウネンの記事についてはちょっとアレ?という点がいくつかあった。今やかなり影響力もある連載だし、私もこのブログやツイッタ―でも何度かベタ褒めしてきた(笑)経緯もあるので、少し感想を書いておきたいと思う。
まず結論から簡単に言ってしまうと、掲載写真2,3 と7,8 及び 15,16はヨーロッパトウネン(以下ヨロネン)で良いと思う(父にもどう思うか聞いてみたが同意見だった)。特に7,8は特徴がわかりやすく出ている。記事ではこの7,8をトウネンとした理由に、「顔の模様が不明瞭」なことと、「側胸はバフ色味が乏しい不明瞭なしみ状」であることを挙げているが、ヨロネンの個体差、及び撮影条件による見え方の変化の範囲内としか見えず、体型や模様もヨロネンの特徴を示しているので、これをトウネンとする理由が見当たらない。
次に15,16。 これはYoung Guns内でも意見が分かれているとのことで、確かに写真からは足がそれほど長くないようにも見える。しかし個体差や写り方を考慮すると、これを根拠にトウネンと言えるほどではなく、むしろ足、嘴とも「細さ」は十分出ているように見える。「大・中雨覆の軸斑と羽縁のコントラストは強くない」とも書かれているが、コントラストは十分強いと思うし、模様自体もヨロネンのものだ。
掲載写真では確かに若干紛らわしいのが2,3。特に右側の写真(3)だと足が短く見えることと、尾端が翼端より長く見えるのがトウネンとの判断につながったのは理解できる。ただこの写真に関しては体の羽毛を膨らませているのと同時に体を斜め45度に立て、さらに足先が手前の小石に隠されていて、実際より足が短く見えやすい条件がいくつも重なっている。これに対して左の画像(2)を見ると脛(tibia)の裸出部の長さは十分ヨロネンの範疇に見える。またこの写真では跗蹠の形が明らかに不自然なので、厚く泥を被っていると考えられ、これがなければさらに足は細長い印象に見えるのではないかと思う。
確かに、その下に掲載された4のトウネンも一見足が同じくらい長い?ようにも見えるのだが、これについては白い羽毛がなくて黒く見える「本当の裸出部分」だけの長さを見ると実はそれほど長くないことがわかる(実はこれは私は普段フィールドもでかなり重視している点で、ヨロネンを探す際にも実際かなり有効だ)。また2,3について「中・小雨覆の軸斑がやや淡色で羽軸の位置がわかる」という説明もされているが、これもヨロネンでも個体や状況によって見られる特徴で、例えばShorebirds of the Northern Hemisphereのp.235の70dがそれに当る。また同書のp.234の70aは翼端より尾羽が突出しているヨロネンの例。
全体を通して感じたのは、トウネンの個体差や状況による印象の変化に注意を促そうとする狙いは非常にいいと思うのだが、他方のヨロネンにも当然多々ある個体差や状況による変化への考慮が不足してしまい、そのために少しバランスを欠いた判断・内容になってしまったのかな?というところ。また個々人の経験の順序として、初期にたまたま特にわかりやすいヨロネンにわかりやすい状況で会ってしまうと、その経験が過度に焼き付いてしまい、それ以後に出会った個体をトウネン的に見てしまうということも実際にあると思う。したがって、今一度海外の画像等も活用しながら両種の個体差を極力公平に洗い直した上で、では識別の際に何を重視するか?を改めて整理していけば、この2種の識別はこの記事から受ける印象ほど難しくはなくなるはず、というのが私の感想だ。
私が子供の頃(1980年代)には自宅から小一時間の多摩川河口へ出れば、トウネンは最盛期には数千羽の大群が見られる超普通種で、一方のヨロネンは国内でもやっと見つかり始めたばかりという珍鳥だった。それだけにごく稀にヨロネンを見つけた時の違和感は非常に飛び抜けたものに見えたが、近年ではトウネンの数が激減し、ところがその割には小規模なトウネンの群の中でもヨロネンが比較的よく見つかる状況がある。そんなことからトウネンよりもむしろヨロネンの個体差に振り回されて迷っている方が増えているような印象を受けている(もちろん初心者が何でもないトウネンをヨロネンにしてしまうケースも相変わらず多いのだが…)。この辺りの時代的な変遷も含めて、以上の内容が今後両種の識別を考える上で参考になればと思っている。
トウネン Calidris ruflicollis]]>
コシジロオオソリハシシギ
http://ujimichi.exblog.jp/21563318/
2015-08-19T21:12:00+09:00
2015-08-19T21:12:15+09:00
2015-08-19T21:12:15+09:00
Ujimichi
シギチ
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アライソシギ×オバシギ
http://ujimichi.exblog.jp/21547380/
2015-08-14T16:55:00+09:00
2015-08-14T16:55:30+09:00
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Ujimichi
シギチ
昨年の10月7日のこと、何気なく眺めていたツイッタ―に突如登場したこのシギの画像を一目見た時はさすがに腰を抜かした。日本のシギチの中で何に一番近いか?といえばオバシギではあるのだが、とはいえオバシギの範疇を大きく逸脱し、明らかに何か別の匂いが強く漂っている。そして数分と経たないうちに、以前ネットで見た、アメリカで夏羽が2度観察されている雑種―アライソシギ×オバシギの姿が脳裏に浮かぶ。そうだ!まさにあれをそのまんま幼鳥にしたような鳥ではないか!!というわけですぐさま撮影者のSさんにDMを送る、するとSさんもやはり同じことを考えていたところだという。さらに後日興味のありそうな友人知人の何人かとやりとりがあったが、やはり皆さん同意見。まあある程度熱心なシギチ観察者なら誰が見てもそうなるよなぁ、となんだか改めて深く納得してしまった。
その後はいうまでもなく私も何度もこの個体を観察しに現地を訪れたが、尾羽、腰、翼の上下面なども含め、最初の画像では見えていなかった細部を見れば見るほど、両種の中間の特徴を見事に兼ね備えていることがさらによくわかった。一応念のために他の組み合わせの雑種の可能性も色々想像してはみたが、やはりこれといって上手く当てはまるものはない。さらに10月のかなり幼羽に近い状態から、第1回冬羽、第1回夏羽と長期に渡る羽色の変化からも、当初の判断を支持する要素しか出てきていない。つまり野外識別の観点からは、非の打ちどころのないアライソシギ×オバシギ、というのが私の率直な印象だ。
なおこうした個体については、DNA分析云々という声もよく聞こえてくる。もちろんそちら側からも裏付けが取れればそれはそれで興味深いと思うが、ただ実際にそうした作業に直接関わることができる可能性があるのはほんの一握りの人にすぎない。これに対して野外観察や、今の時代ならではのネットによる画像収集・比較検証といった作業は、その気になれば誰でもすぐに行え、直接的にその過程に参加できるのが大きな利点であり醍醐味だ。この個体の画像はこれまでにネット上にもかなり多数出回っているので、「~と言われている」という伝聞に終わらず、両親の特徴がどこにどう表れていると考えられるのか、ぜひこの機会に全体の印象から細部に至るまで、一人一人の目で詳しく観察し考えてみて頂けたらと思う。
アライソシギ×オバシギ 第1回冬羽 2014.11.10 千葉県船橋市 1st winter Surfbird x Great Knot Calidris virgata x C.tenuirostris
オバシギより嘴が短く全体にやや寸詰まりの体型で、嘴基部と足の黄色味が目立つ。特に第1回冬羽への換羽が進むと、何よりも全体の羽色の暗さが遠目からも非常に際立っていた。この画像では上背から肩羽、大雨覆、中雨覆が冬羽に換羽している状態で、三列風切や小雨覆にはかなり幼羽が残っている。
アライソシギ×オバシギ 第1回冬羽 2014.10.27 千葉県船橋市 1st winter Surfbird x Great Knot Calidris virgata x C.tenuirostris
左のオバシギと比べて、嘴の短さと羽色の暗さに注目。
<同年齢のオバシギ(下)との比較
冬羽に換羽済みの上背から肩羽はオバシギより暗色で、白っぽい羽縁が目立たずよりベッタリと一様に見える。雨覆は幼羽が多く残っているが、こちらも摩耗を考慮してもオバシギより羽縁が狭く、遠目により暗色に見える。
参考:アライソシギ Calidris virgata 2015.1.19 ロサンゼルス
チドリ類を思わせる短い嘴が特徴。冬羽は腹部を除いて全体に暗く一様な灰褐色。嘴基部と足の黄色が目立つ。件の雑種は全体にオバシギとの中間的な特徴を併せ持っていることがよくわかる。
アライソシギ×オバシギ 幼羽→第1回冬羽 2014.10.14 千葉県船橋市 juvenile-1st winter Surfbird x Great Knot Calidris virgata x C.tenuirostris
まだ幼羽の多く残る10月中旬の画像。上尾筒は白色で無斑、なおかつ密に暗色斑が並ぶ下背との境界線が明瞭なのもアライソシギの特徴が出ている。さらに翼上面の白い翼帯はオバシギより太めで、初列風切の基部外弁にも白色部がある。
アライソシギ×オバシギ 第1回冬羽 2014.10.14 千葉県船橋市 1st winter Surfbird x Great Knot Calidris virgata x C.tenuirostris
尾羽はT6(最外側羽)とT5の基部が白く、それ以外の部分が黒っぽくテールバンドを形成する。オバシギでは基部まで一様な灰褐色なので、この点もアライソシギの特徴が出ている。
アライソシギ×オバシギ 第1回冬羽 2014.10.27 千葉県船橋市 1st winter Surfbird x Great Knot Calidris virgata x C.tenuirostris
腋羽と下雨覆はほぼ真っ白。この点もアライソシギの特徴がよく表れている。オバシギやコオバシギでは暗色斑が散らばり、これほど白くは見えない。
アライソシギ×オバシギ 第1回冬羽→第1回夏羽 2015.4.6 千葉県船橋市 1st winter-1st summer Surfbird x Great Knot Calidris virgata x C.tenuirostrisこの画像ではまだ不完全だが、夏羽は胸から腹に太い黒斑が並び、肩羽が赤褐色で錨型の黒斑がある、オバシギによく似た羽色になった。しかしそもそもアライソシギとオバシギは夏羽の羽色がよく似ているので、これも全く予想通りの結果だった。
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オオメダイチドリ
http://ujimichi.exblog.jp/21515932/
2015-08-04T16:56:00+09:00
2015-08-04T16:56:29+09:00
2015-08-04T16:56:29+09:00
Ujimichi
シギチ
オオメダイチドリ
オオメダイチドリ
オオメダイチドリ (左) とメダイチドリ (右)
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奇跡の2ショット
http://ujimichi.exblog.jp/21287566/
2015-05-29T18:22:00+09:00
2015-05-29T18:22:15+09:00
2015-05-29T18:22:15+09:00
Ujimichi
シギチ
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アイスランドカモメと不明カモメ
http://ujimichi.exblog.jp/21098760/
2015-04-08T17:31:00+09:00
2015-04-08T17:31:21+09:00
2015-04-08T17:31:21+09:00
Ujimichi
アイスランドカモメ
アイスランドカモメ 亜種kumlieni Larus glaucoides kumlieni
一方で、2009年に山階鳥類学雑誌に論文発表され、日本産鳥類目録第7版にも出典として採用されてしまっている2007年長崎県雲仙市の記録は、多くのカモメ観察者が一目でわかるほどの明らかな誤認例。ネット上の同個体の画像を見てもまず背の色が濃すぎるし、足は黄色いし、初列風切のパターンもいかにも不自然。タイミルセグロカモメまたはセグロカモメの初列風切を単に白くしたような奇妙な外観のこうしたカモメは、かなり稀ながら日本各地でこれまで度々観察されている。アイスランドカモメとは言い切れない―のではなく、アイスランドカモメではないと明確に言い切れるタイプだ。件の論文は確かにカモメをよく知らない人が見れば専門用語や細かい数字を並べた一見いかにももっともらしい体裁なので、一般に権威あると思われている研究誌や目録にもあっさり載ってしまったのだろうが、せめて影響力の強い機関の中にはもう少しカモメ類を適切に見極められる人が増えることを願うばかりだ。
長崎のものと同タイプの不明カモメ 2002年3月23日 神奈川県
13年も前の画像だが、この個体は発見した時点でアイスランドカモメという選択肢自体思いつかない全くの別物という印象。背の色はセグロカモメと同等。小さめの個体ではあるが、特にタイミルセグロカモメの小さめの個体では普通に見かける範囲のサイズと体型と感じた。畳んだ初列風切は各羽先端の白色部が非常に大きくてほぼ切れ目なく繋がっているが、と同時に内弁側の縁(この画像では上辺部)が不自然に黒ずんでいるのもこのタイプによく見られる特徴で、アイスランドカモメには普通見られない配色。長崎個体も特にネット上の画像で同様の特徴がはっきり現れている(これに対して本エントリ冒頭のアイスランドカモメではこの内弁側の縁が逆に白っぽいぼかしになっていることに注意)。既知の種の中で消去法的に識別すると、人によってはこのような不明個体をアイスランドカモメと見てしまうのも無理はないが、こうしたタイプの存在を予め知っていればそれほど迷うことはないだろう。
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アイスランドカモメ亜種kumlieni 第4回冬羽
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2015-03-29T17:36:00+09:00
2015-03-29T17:36:28+09:00
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Ujimichi
未分類
アイスランドカモメ 亜種kumlieni Larus glaucoides kumlieni 第4回冬羽
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アメリカオオセグロカモメ
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アメリカオオセグロカモメ Larus occidentalis
アメリカオオセグロカモメ Larus occidentalis
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オビハシカイツブリ
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